
【連載記事 第1回】見落とされがちな防水筐体の盲点とは?──ロボット溶接が鍵を握る理由
はじめに|防水性能を構成する"見えない要素"に注目しよう
私たちは日々、お客様から「仕様通りのガスケットを使っているのに、なぜか水漏れが起きる」といった切実なご相談をいただきます。実はその原因の多くは、目に見えるシール材ではなく、筐体そのものが持つ"見えない精度"にあることが多いのです。
屋外や工場、災害が想定される環境で稼働する電子機器が増える中、防水・防塵性能の重要性は日々高まっています。この記事では、製造工程の中でも特に奥が深い「溶接」に注目し、それがなぜ防水性能の鍵を握っているのか、その本質に迫ります。
目次
1. なぜ見落とされる?シール材より先に考えるべきこと
多くの設計者の方が最初に注目されるのは、やはりガスケットの性能です。しかし、私たちが数々の現場で見てきた中で断言できるのは、「シール材が機能を発揮するには、接触面が完全に平坦でなければならない」という事実です。
例えば、蓋と本体のフランジ面。ここに溶接が原因でごくわずかな歪みや凹凸が存在すれば、いくら高性能なガスケットを使っても、その性能は半減してしまいます。
つまり、防水性能は、
ガスケット等の素材性能 × フランジの平面性・精度
この掛け算で初めて成立するのです。
この「フランジの平面性」こそ、お客様が見落としがちで、そして私たちが最も重要視しているポイントです。防水筐体の信頼性は、この「見えない製造精度」に大きく依存していると言っても過言ではありません。
2. 溶接工程は"バックヤード"ではない
製造工程において、溶接は時として「部品をつなぐだけ」の単純な作業だと思われがちです。しかし、防水性能を本気で考えるなら、溶接は「製品の寿命を最後まで支える信頼の要」と言える、極めて重要な工程です。
特に精密電子機器の筐体では、一箇所のわずかな隙間が命取りになります。そこから水や埃が侵入し、内部の基板に致命的なダメージを与える可能性があるからです。
その意味で、溶接は防水の可否を左右する"隠れた主役"。単に形を作るだけでなく、設計者が意図した性能を現実のものにするための、最も繊細なプロセスなのです。
3. 次回へつなぐヒント
では、なぜその重要な溶接工程で、防水性を損なう「歪み」が発生してしまうのでしょうか。
第2回では、溶接に必ず伴う物理現象――「溶接歪み」に焦点を当て、その発生メカニズムを技術的に掘り下げていきます。
4. 第1回まとめ
- 防水性能は「シール材の性能」と「筐体の平面精度」の掛け算で成立する。
- 溶接工程は、その平面精度を左右する、防水性を支える隠れた主役である。
- 目に見えない"製造の精度"こそが、防水信頼性の本当の土台になる。
次回予告
【連載記事 第2回】溶接歪みの発生メカニズムとその対策
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※本記事は一般的な技術情報に基づいて構成しています。実際の設計条件や評価基準は製品仕様や要件に応じて異なります。

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