【防水と放熱の両立テクニック】密閉性と熱対策の最適化
電子機器の設計では、防水性能と効果的な放熱のバランスを取ることが重要な課題となっています。最近の電子機器は、様々な環境で使用されることが多くなり、同時に高性能化による発熱も増加しています。防水性を高めるために筐体を密閉すると放熱が難しくなり、逆に放熱を重視すると防水性が低下するという問題があります。ここでは、両方のニーズを満たす設計のヒントをお伝えします。
防水設計の基本
防水設計を考える際は、まずIP(Ingress Protection)規格を理解することが大切です。
この規格は、外部からの固形物や液体の侵入に対する保護レベルを示しています。
IP規格について
防水筐体の性能は、IP(Ingress Protection)規格で評価されます。
例えば、IP67は「完全な防塵」と「一時的な水没に対する保護」を意味し、IP68は「完全な防塵」と「長時間の水没に対する保護」を意味します。
一般的な防水構造には、次のようなものがあります:
- ガスケットやOリングによるシール
- 防水コーティング
- 迷路のような構造(ラビリンス構造)
放熱設計の基本原理
素材選定 効果的な放熱設計には、熱の伝わり方(熱伝導、対流、放射)を理解することが役立ちます。電子機器で熱を発生させる主な部品は、CPU、電源ユニット、バッテリーなどです。
防水と放熱を両立させる設計のコツ
材料選び
熱を伝えやすく、かつ防水性のある材料を選ぶことが大切です。例えば、熱伝導性のあるシリコーンゴムは、防水性と放熱性の両方に優れています。筐体にはアルミニウムなど、熱を逃がしやすい材料を選ぶケースが多いです。
構造の工夫
ヒートシンクを上手に配置すると、内部の熱を外に逃がしやすくなります。また、内部の空間を工夫して、熱がたまりやすい場所を減らすことも効果的です。
吸気・排気のファンを効率的に設置することも重要ですが、この場合は防水性との兼ね合いに注意しなくてはなりません。
通気口(ベント)の活用
水は通さないけれど空気は通す特殊な膜を使った通気口を設けると、内部の圧力調整と熱の排出を同時に行えます。これにより、防水性能を保ちながら熱を逃がすことができます。また、内部の結露対策にも有効です。
熱の通り道を考える
熱を伝えやすいシートや熱伝導グリスを上手に使うと、熱源から筐体の外側まで熱を効率よく伝えることができます。また、基板の設計段階で、熱を逃がしやすいレイアウトを考えることも大切です。
基板上でのシミュレーションも可能です。
機器を動作させた際の温度上昇を抑え、機能・性能、機器の寿命、安全性が確保された基板設計であるか検証いたします。
ジャンクション・ケース温度 | 基板上の温度分布 |
シミュレーションと実験
コンピューターを使って熱の流れをシミュレーションすると、設計段階で熱の動きを予測できます。また、試作品を作って実際に測定し、改良を重ねることも大切です。
製品別の工夫
屋外に置く通信機器では、日光の影響も考えた特別な放熱設計が必要になります。弊社では筐体に日よけを設けたり、遮熱塗料を採用することで内部温度の抑制に繋げた実績もございます。
これからの可能性
新しい素材の開発が進んでおり、防水と放熱の両立に役立つ可能性があります。また、AIを使ってより効率的な設計を行う研究も進んでいます。
まとめ
防水と放熱を両立させるには、材料の選び方、構造の工夫、新しい技術の利用など、様々な方法を組み合わせることが大切です。それぞれの製品の特徴に合わせて、最適な方法を見つけていくことが重要です。
これらの方法を上手に組み合わせることで、防水性能が高く、かつ熱対策もしっかりした製品を作ることができます。今後も新しい材料や技術が登場し、さらに良い解決策が見つかることが期待されます。
まずはお気軽にお問い合わせください。
製造業も立派なサービス業。
お客様から加工依頼を受けるだけではなく、お客様が抱える問題への本質的な解決につながるヒアリング力とご提案体制でお待ちしております。